共和化工株式会社

KYOWA PRESS

『バイオマスで育てた、農作物をレストランで提供する』〜資源循環の構築〜

『バイオマスで育てた、農作物をレストランで提供する』〜資源循環の構築〜

2021.11.01

<目次>
1)はじめに
2)肥料の品質向上
3)自社・委託による農業

1)はじめに

水処理の過程で発生する汚泥は、大きく分けて 2種類『有機汚泥』と『無機汚泥』がある。

 

有機汚泥は有機物を多く含んだ排水処理から発生し、無機汚泥は金属成分を多く含んだ排水から発生する。汚泥は産業廃棄物の約4割を占め、うち約4割(産業廃棄物の約2割)を下水汚泥が占めている。下水汚泥は建築資材としてリサイクルされることが多いが、この方法だと下水汚泥に含まれている『N(窒素)』や『P(リン)』が有効活用されない。

 

下水汚泥自体は水処理過程で働いた微生物の塊だが、その栄養源は生活排水やし尿に含まれていた有機物が多くを占めている。

 

そのため下水汚泥に対するイメージや肥料特性が地域ごとに少しずつ異なるなどの問題もあり、現状では肥料としての利活用が十分には広がっていない。

 

しかし下水汚泥を発酵処理した汚泥発酵肥料は、肥料成分である窒素やリン、また有機質が豊富で、植物の生育だけではなく土壌の肥沃化にも寄与する。

 

特にリンは世界的に枯渇が懸念されており、その循環・再生利用は大きな課題となっている。 また、汚泥発酵肥料の農地や緑地への利用は地域資源循環の一つの方法であり、資源循環型社会形成の一助となる。

そこで共和化工(株)は、全国で40ヵ所以上の肥料化施設の設計施工および運営に携わり、特に汚泥発酵肥料の利活用を広めようとしている。

 

方法としては、下記の2点を本記事では紹介する。

● 肥料の品質向上

● 自社・委託による農業

2)肥料の品質向上

2-1)超高温好気性発酵技術
弊社は2000年代初頭まで、家畜糞尿などの堆肥化装置を用いて、高品質かつ安定した肥料化を目指したが、うまくいかず失敗の連続であった。

 

しかし、鹿児島市の(株)山有が当時で20年以上の下水汚泥の堆肥化実績を持つことを知り、その堆肥化技術に着目し、平成14年に技術提携の基本契約締結を行った。

 

山有が開発した高品質肥料化技術は「超高温好気性発酵」と呼ばれ、一般的な堆肥化と比較し、発酵温度が高く、堆肥化期間が短く、減容化率が高いという特徴がある。

 

超高温好気性発酵では、発酵温度が高いことから汚泥などの有機性廃棄物に含まれている病原性微生物や雑草種子は完全に不活化(死滅)される。また強制的に空気を送り込むことで好気的条件下にて発酵が進み、メタンや硫化水素など嫌気状態で発生する臭気成分は抑制されている。これにより、衛生的かつ良質な肥料生産が可能になっている。

 


一般的な乾燥処理や堆肥化と大きく異なる点は、高温で働く特許微生物(YM菌)の存在である。汚泥を乾燥させるだけの処理方法では、易分解性有機物が十分に分解されていない未熟な肥料になり、根腐れなどの障害が生じてしまう。乾燥処理法で汚泥処理はできるかもしれないが、農家は二度と使わない肥料になるだろう。

 

一方、YM菌は80°C以上での高温環境下でも活発に有機物分解を行い、発酵温度が極めて高く上昇する(時には100°Cに達する)ため、有機物を盛んに分解しながら汚泥の水分をどんどん下げることができる。

 

そうすると、水分も易分解性有機物も低い(窒素、リンが豊富な)肥料が出来上がる。良質で肥料効果が高く期待でき、しかも安全で安価であれば農家は繰返し使いたくなるだろう。

 

つまり、「超高温好気性発酵」は下水汚泥から病原微生物フリーで作物に安全安心な肥料を作り上げ、農作物への継続的な利活用が見通せる技術であることから、資源循環型社会において非常に重要な位置づけにあると弊社は考えている。

 

YM菌を用いた「超高温好気性発酵」は下水汚泥以外に、生ごみや家畜糞尿、剪定枝などの種類の異なる有機性廃棄物をまるごと分解でき、寒冷地といった立地環境の影響を受けにくい側面もある。あらゆる有機性廃棄物を資源化するという応用面においてもメリットが大きい技術である。
下水汚泥の肥料化方法の簡単な流れは以下の通りである。

 

▼脱水した下水汚泥とYM菌を含む種菌(返送品)を混合
▼この混合物を肥料化槽に入れ、下から空気を送り込み好気発酵させる
▼週に1回ほど混合物を重機で混合し、これを5~6回行うことで肥料成分を均一にする
▼発酵が完了したものを篩掛けし、肥料袋に入れる

 

2-2)堆肥化施設

 

本技術を使用した施設は北海道から沖縄県まで全国40ヵ所以上あり、うち4ヵ所は自社で投資し維持管理を実施している施設(自社工場)である。その他の施設は主に自治体や民間企業に納入されており、下水汚泥や生ごみの肥料化を中心に実施している。

 

自社工場は北海道佐呂間町、富山県南砺市、高知県高知市、長崎県大村市で稼働しており、各地域の下水汚泥をはじめとした有機性廃棄物を日々資源化している。しかし肥料製造だけでは資源循環の始まりに過ぎず、橋掛けにするには土壌に「還す」ことが必要である。

 

3)自社・委託による農業

3-1)自社農場と委託栽培

 

弊社は農業法人「和饗エコファーム(株)」を設立し、農業展開を図っている。現在、全国に自社農場は5ヵ所(北海道佐呂間町、茨城県下妻市、大阪府堺市、福岡県糸島市、沖縄県那覇市)あり、委託・契約農家は10ヵ所以上ある。

 

自社農場の北海道ではカボチャ、茨城県ではサツマイモを栽培している。農作物は流通会社を介してスーパーマーケットに卸す他、弊社が運営している和食レストラン「和饗」でも提供している。長野県塩尻市では酒米の美山錦を委託栽培し、日本酒「吉村」の製造も委託している。

 

 

農作物の栽培・販売の他に加工・流通を行う背景には、この一連の取組みをブランド化したい意図もある。

 

ブランド化が進めば結果として、資源循環型社会の促進につながると考えられるからである。また、大阪府と福岡県の自社農場では、ASIAGAPの認証を取得している。ASIAGAPはJGAPと同様に「食の安全や環境保全に取組む農場」に与えられる認証である。

 

ASIAGAP取得により、汚泥発酵肥料が農業ビジネスにおいて非常に有効かつ価値のある資材であることを、国内外に広く知らしめたい考えである。

 

3-2)土壌診断と味覚分析

 

和饗エコファームではまた、委託・契約農家を対象に土壌診断を行っている。土壌診断によって土壌の現在の状況を正確に把握することができ、施肥量や施肥時期などの決定の手助けとなる。特に施肥量が過剰な場合は、肥料代が無駄にかかるだけではなく、地下水汚染につながり環境に対して悪影響を及ぼす。土壌診断の結果から、施肥量の削減などのアドバイスをすることもある。

 

また農作物に対し、味覚分析を実施することもある。食べ物のおいしさというのは、個人個人の主観的感覚であり客観的な判断が難しい。そのため、機械的に客観的な診断ができる味覚センサーや糖度計などの簡易測定器を導入している。

 

味覚センサーは、人間が味を感じる仕組みを真似して作成した人工脂質膜を搭載しており、苦味・酸味・塩味・旨味・渋味をそれぞれ相対比較できる機械である。

 

汚泥発酵肥料を用いて栽培した農作物と、化学肥料を用いて栽培した農作物などを比較し、味の差を客観的に判断することが可能である。
このようなツールも使うことで、汚泥発酵肥料のさらなる普及を目指している。

 


3―3)和食レストラン「和饗」

汚泥発酵肥料を用いて栽培した農作物を食べることで、一つの資源循環サイクルが完成する。

 

『3-1』でもふれたが、弊社は和食レストラン「和饗」も運営しており、そこで汚泥発酵肥料を用いた農作物を食べることができる。また、弊社は創業以来、食肉センター廃水など、高濃度汚水処理を手掛けてきた水処理のプラントメーカーであり、食肉業界とも縁がある。

 

その縁から豚肉を仕入れ、関連農場からの農作物と合わせたしゃぶしゃぶをメインに提供している。またレストランでは日本酒「吉村」も提供しており、大吟醸・純米酒・純米原酒の各種を取り揃えている。飲み比べセットもあり、自分の好みを探すのも楽しい。

 

●和饗エコファーム|オンラインショップ

https://wakyo-ecofarm.stores.jp/

 

また常時、収穫のようすを伝えるムービーが流れている他、生産者の写真やコメントの掲載、野菜やお米の直売も行っている。これら一貫の取組みによって、資源循環型社会の一つの例になりえると考える。

 

4)おわりに

下水汚泥の肥料化は、資源の循環に対して非常に有効な手法であると考えられる。
しかし、そのイメージの課題もあり、十分な普及には至っていない。
弊社の一連の取組みが肥料生産側と肥料利用者側の橋掛けとなり、さらなる普及につながれば幸いである。

 

また、この一連の取組みを、今年の下水道展’21大阪にて紹介させていただいた。
来場してくださった方々には改めてお礼申し上げます。

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